写真じゃ伝わらない! 浮世絵版画の技法
*空摺(からずり)*
版木に絵の具を付けずに摺り、紙に凹凸を付ける版画技法
(写真)百千鳥狂歌合「四十雀、こまどり」 喜多川歌麿 1790年頃 25.5×18.8cm 千葉市美術館
この菊の花部分はすべて空摺りで表現されています。
空摺は、凹凸の陰で模様が浮き出るしくみで、現在で言うエンボス加工みたいなものです。
主に着物の模様や、白いものの輪郭などに使われており、墨で摺るよりふわっとした表現になります。
絵の具を使わない版画技法。面白いですね。
ちなみに、空刷りよりさらに深く凹凸を彫り、より深く刷る「きめ出し」というものもあります。(雪や模様などに使います)
*正面刷り*
専用の版木の上に、擦り終わった作品を表にして置き、バレンで擦ってツヤのある模様を擦り出す版画技法
(写真)月百姿 深見十左衛門 月岡芳年
光のあたり具合で、光沢のある模様が浮き出て来ます。
*雲母摺り(きらずり)*
日本画特有の絵具の雲母(うんも)を使って刷る版画技法
(写真)婦女人相十品 ポッピンを吹く女 喜多川歌麿筆
雲母は叩くと平に割れる鉱石。キラキラと独特な光沢が出ます。
*毛割(けわり)*
髪の生え際を細い線で表現する版画の技法
(写真)扇屋花扇(おうぎやはなおうぎ) 喜多川歌麿 1795-1796年 38.6×25.8cm ボストン美術館
この、結い上げた髪の根元の表現です。
大首絵のような上半身だけ描いた絵は、髪の毛の表現がひとつの見どころでした。
この毛割という技法で、櫛で梳いたような美しい生え際や、襟足のほつれ毛まで丁寧に彫ることで、より複雑な髪の動きを表現できました。毛割の表現方法は、主に二通り。
・八重毛
髪の毛の数本ごとにある節目(ひとまとまり)を表すように彫る表現方法
・通し毛
すっと長く毛を彫る表現方法
毛割は彫り工程の中で最も難しい技術で、親方のような高度な技術を持つ人物が担当していました。(そのような人を頭彫といいます)
毛割の技法が発達したのは1790年頃、歌麿の美人大首絵の最盛期とともに発達しました。
いかがだったでしょうか
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投稿 2020.04.29
更新 2021.07.01
参考