西洋美術史をざっくり解説 ギリシャ・ローマ美術からシュルレアリスムまで
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【keywart】西洋美術史をわかりやすく解説
今回は、ギリシャ・ローマ美術からシュルレアリスムまでの西洋美術史を、中心人物や特徴などを時代背景とともにざっくりと解説していきます。
(内容解説)
時代:時代、年代
特徴:その時代の作品の特徴
目的:画家の目的
用途:描かれた美術品の使い道
場所:中心となった場所
人物:中心となった人物など
背景:時代背景・技術革新など
ギリシャ美術
時代:BC6世紀頃〜0年
特徴:理想の姿・筋肉・大胆
画題:ギリシャ神話の神々
目的:「理想の美」の追求
場所:ギリシャ
人物:不明
背景:哲学が盛ん。良質な大理石が多く採れた
ギリシャ美術が栄えた時代では、哲学が盛んで、「精神と肉体との調和が取れた人間」になることが理想とされていました。
パルテノン神殿やミロのヴィーナスなどがこの時期に制作されています。
(写真)ミロのヴィーナス
ローマ美術
時代:紀元前1世紀頃〜3世紀頃
特徴:巨大
画題:皇帝の肖像など
用途:権力誇示
場所:ローマ
背景:ローマ帝国の拡大により発展
ローマ美術はローマ帝国の拡大により発展した美術です。
そのため、強大な権力を表すコロッセウムや凱旋門などの巨大な建造物が多く作られました。
彫刻ではプリマポルタのアウグストゥスなどが有名です。
初期キリスト教美術
時代:2世紀頃〜6世紀頃
特徴:モザイク画・素朴な表現
画題:宗教画
目的:布教
用途:布教
場所:ローマ
背景:キリスト教とともに発展
初期キリスト教美術は、ローマ帝国の拡大とともに入ってきたキリスト教を、文字の読めない人々にも伝えるために発展していきました。
キリスト教がローマに伝わった60年頃から、公認される313年までは弾圧の対象でしたが、信者たちは弾圧を受けながらも墓地や壁画に絵を描きました。
聖書の物語を伝えられるよう、モザイクを用いて描かれました。
ビザンティン美術
時代:5世紀〜15世紀頃
特徴:正面から描いた肖像画・装飾的
画題:宗教画(キリスト教)特にイコン(聖人像)
用途:布教・政治利用
場所:東ローマ帝国
背景:モザイク画・フレスコ画が発達
ビザンティン美術では、ギリシャ・ローマ美術やキリスト教美術を継承しつつ、アジア(ペルシャ)から入ってきたエジプトやメソポタミアの装飾的な美術要素が加わった絵画様式が誕生しました。
この時期、頻繁に描かれるのはイコンという、聖人の肖像画でした。
特にキリストを真正面から描いたイコン画は、神聖なものとされ、権威を持つようになります。
(写真)受胎告知(部分) 5世紀前半 サンタ・マリア・マッジョーレ聖堂
ゴシック美術
時代:12世紀後半〜
特徴:ステンドグラス
場所:北フランスなど
有名:シャルトル大聖堂のステンドグラスなど
背景:建築技術が進歩
大きな窓を作れるようになった
建築技術が進歩したことにより、アーチや細い柱での建築、大きな窓を作れるようになったため、絵画は壁画でなくステンドグラスが多く用いられるようになりました。
(写真)シャルル大聖堂
ルネサンス美術
時代:14世紀頃〜
特徴:正確で均整の取れた人体、豊かな表情、奥行ある空間表現
画題:宗教・人物・風景・風俗
目的:ギリシャやローマ文化の復活。現実的・科学的に捉える。
用途:布教・権力誇示など
場所:イタリア(フィレンツェ)→ローマ
人物:レオナルド、ミケランジェロ、ラファエロ
背景:戦乱・ペストの流行、絵の具の発展
ルネサンスの語源はイタリア語の「再生(rinascita)」
ルネサンスはギリシャ・ローマ文化の「再生」を目指しました。
戦乱やペストの流行により、人々は(ギリシャ・ローマ文化のような)従来の価値観にとらわれない人間性を目指し、人間や自然を現実的・科学的に捉えようとしました。
絵の具を作る技術が発展したことで、より緻密な描写が可能になったことも、ルネサンス文化の発展に大きく影響しました。
また、この頃から風景画・風俗画が描かれ始めますが、風俗画といっても宮廷の様子を描く程度でした。
補足:ルネサンス内での分類
・初期ルネサンス
自然な表情・奥行きのある空間表現。
ジョットやボッティチェリなど
・北方ルネサンス
人物画、風景画、風俗画を確立。
ヤンファンエイクなど
・盛期ルネサンス
ギリシャ・ローマと同等の美術の完成。
レオナルドやミケランジェロ、ラファエロなど
(写真)アテネの学堂 ラファエロ・サンティ
1511年 500×7.7cm ヴァチカン美術館
バロック美術
時代:16世紀末〜18世紀前半
特徴:暗い画面・劇的な光の演出・誇張
画題:宗教・人物・風景・風俗(宮廷の従者も描くようになる)
用途:カトリックの信者を増やすため、権力誇示(貴族から富裕層まで拡大)
場所:イタリア・スペイン・オランダ
人物:カラバッジオ・ルーベンス(イタリア)、
ベラスケス(スペイン)、
レンブラント・フェルメール(オランダ)
背景:宗教改革・プロテスタント誕生・カメラ・オブスクラ
バロック美術は、宗教改革によりプロテスタントが生まれたことで、危機を感じたカトリックが信者を呼び戻すために生まれました。
スポットライトをあてたような、ドラマチックな光の演出が特徴です。
また、16世紀からはカメラ・オブスクラという、風景を投影する装置が普及したことでより写実的な絵画を可能としました。
補足:キリスト教の宗教画はカトリックだけ
キリストの姿を想像で描くことは、本来キリスト教で禁止されている「偶像崇拝」であると反対し、生まれたのがプロテスタント。
そのため、プロテスタントは宗教画をほとんど描いていません。
(写真)夜警 レンブラント・ファン・レイン 1642年 363×437cm アムステルダム国立美術館
ロココ
時代:18世紀
特徴:軽快・優美・装飾的
画題:宗教・人物・風景・風俗(男女の戯れ)
用途:権力誇示
場所:フランスの宮廷
人物:ヴァトー、フラゴナール
背景:貴族文化、サロンが始まった
貴族が栄え、ピクニックやサロンなどといった貴族の文化が優雅になった時代。
この時代では、貴族の生活や男女の戯れを想像的に描きました。
(写真)ぶらんこ フラゴナール 1768年頃 ウォレス・コレクション(ロンドン)
新古典主義
時代:18世紀後半〜19世紀前半
特徴:安定した構図、正確な形、形式美
画題:宗教・人物(肖像)・風景・風俗
目的:ギリシャ・ローマ様式の模倣
用途:権力誇示など
場所:ヨーロッパ全土
人物:ダヴィット・アングル
背景:新たな古代遺跡の発見から古典への関心
ナポレオン政権
この時代では、軽快で派手なロココの反動や新たな古代遺跡の発見から、再び古典を見直す動きが出てきました。
(写真)グランド・オダリスク アングル 1814年 ルーヴル美術館
ロマン主義
時代:18世紀末〜19世紀前半
特徴:個性、感情、主観的な作品(絶望・恋愛など)
画題:歴史・人物・風景・風俗
用途:権力誇示
場所:イギリス・フランス・ドイツ
人物:ドラクロワ・ゴヤ
背景:産業革命・民主主義
ロマン主義では、新古典主義に対し、個人の自由な感性や想像力を表した情熱的な絵画が好まれました。
特に有名な作品はウジェーヌ・ドラクロワの「民衆を導く自由の女神」など
(写真)民衆を率いる自由の女神 ドラクロワ 1830年
写実主義
時代:19世紀中頃
特徴:写実的、自然光
画題:風景・人物(農民をメインで描くようになる)
目的:目に見えるものをありのままに描こうとした
場所:パリ郊外
人物:クールベ、ミレー、コローなど
写実主義の画家は、古典主義やロマン主義などの理想的な世界ではなく、現実を見直そうとしました。
(写真)落穂拾い ジャン・フランソワ・ミレー 1857年 83.5x111cm オルセー美術館
印象派
時代:19世紀
特徴:明快な色、荒いタッチ、屋外での制作
画題:風景・風俗(娼婦なども描くようになる)
目的:光がきらめくその一瞬を切り取ろうとした
場所:フランス
有名:「印象ー日の出」
背景:チューブ絵具の開発、写真の発明(1827年)
蒸気機関車(1802年)、ジャポニズム(19世紀中頃)
混色せず、チューブから出したままの色で、その時その瞬間の印象を描く技法が特徴的な印象派。
印象派の語源はモネの「印象ー日の出」です。
印象派は「デッサンや遠近法など優れた技法で歴史画・宗教画を描くことがすばらしい」と考えられていた時代に、技法を無視した感覚的な技法で風景画や風俗画を描きました。
また、チューブ入り絵の具が開発されたことで、屋外での制作が容易になったことも重要な点です。
(写真)印象-日の出 クロード・モネ 1872年
フォービズム
時代:20世紀初頭
特徴:原色・激しい色彩・
画題:風俗・風景
目的:色彩で感情を表そうとした
場所:フランス
人物:マティス、アンドレ・ドラン
フォービズムはフランス語の「フォーヴ(野獣)」から来た名前です。
「色の革命」ともいわれ、本来の色にとらわれず、原色を使った激しい色彩で感情を表現しました。
(写真)赤のハーモニー アンリ・マティス
キュビズム
時代:20世紀初頭
特徴:複数の視点や角度から描く
画題:人物・静物・風景
目的:3次元をいかにして2次元にするかという主題の追求
場所:フランス(パリ)
人物:ピカソ・ブラック
キュビズムの語源は「キューブ(立方体)」
ブラックの描く風景画が「小さなキューブによる絵のようだ」と、言われたことから、この名前が付きました。
伝統的な遠近法や写実を一切排除したことから、「形の革命」ともいわれています。
(写真)アヴィニョンの娘たち パブロ・ピカソ 1907年 ニューヨーク近代美術館