つれづれ美術手帖

アート関連のアウトプットブログです。

熊田千佳慕(くまだちかぼ)

熊田千佳慕(くまだちかぼ)*
生 誕  1911-2009年
時 代  現代
居住地  神奈川県
分 類  グラフィックデザイナー、絵本画家
代表作  ファーブル昆虫記
特 徴  細密描写・線のように塗り重ねる色彩
題 材  自然の虫や草花



熊田千佳慕(くまだちかぼ)は日本のグラフィックデザイナー、絵本作家です。

戦前はデザイナーとして活躍し、
戦後は絵本作家・画家として活躍しました。
特に絵本画家としては、昆虫や植物を生命感豊かに描くことから、「日本のプチ・ファーブル」とも呼ばれ、世界的にも高い評価を得ています。
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(写真)熊田千佳慕展ポスターより

熊田千佳慕の本名は熊田五郎。
絵本の挿絵を描いた際、読者から「この名前は縁起が良くない」と言われたことから改名しました。
名前の意味は「千人の佳人(美人)から慕われる」だそうです。

生命感豊かな生物の表現

熊田の描く自然の動植物の絵は、生き物の息づかいが伝わってくると評されるほど、忠実で生命感に満ちています。
その描き方は独特で、熊田は地面に這いつくばり、虫の目と同じ目線となってじっと観察を続け、点描を何度も重ねるようにして納得するまで虫の姿を描きます。
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(写真)熊田千佳慕展ポスターより 拡大

このスタイルになったきっかけは熊田が学生の頃、軍事教練でのこと。
腹這いになって撃つ練習をしていたとき、草むらからコオロギなどが出てきたのを見て、「虫の世界は、自分の目をそこまで下げないと見えない」と考えたそう。

点描技法は、熊田が普通の画家のように、何度も描いて消すというやり方ができなかったため、じっと見つめて点をとりながら見極めてから書くようになった。

また、彼の配色技法は、戦中、空襲の焼け跡から出てきたカチコチの絵具を、色鉛筆のようにして使ったことから、この技法が生まれました。
下の色が上に出てくる特色を生かし、柔らかく立体的に見えるように表現しました。

「一本の線を引くにも、普通の方は何本も引いて要らないところは消して一本の線を引く。
それができないから、物を見るときによく見るんですね。見て、もう一つは見つめるんです。そして最後に、あっ、これだと見極める。見て、見つめて、見極める。このプロセスを神から授かったんですね。 」

インタビュー記事より引用: https://www.yurindo.co.jp/static/yurin/back/404_4.html

ファーブル昆虫記

熊田の代表作と言われる作品は、ジャン・アンリ・ファーブルの「昆虫記」をテーマにした『 「ファーブル昆虫記」です。
熊田60歳頃から、ファーブル昆虫記を描くことをライフワークとし、完成を目指して日々昆虫を描き続けました。
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(写真)ファーブル昆虫記の虫たち(2) 1998年

熊田は70歳の頃、「私は虫であり、虫は私である」ということを悟ったそう。
自然の動植物を見つめてきた熊田にとっての、一つの答えなのかもしれません。




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投稿 2021.01.08
更新 
参考 
有隣堂 座談会 熊田千佳慕の世界
https://www.yurindo.co.jp/static/yurin/back/404_4.html
熊田千佳慕インタビュー記事。とても面白い内容でしたので興味ある方はぜひ。


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