パーソンズ、ハウゼンの「絵画鑑賞の発達段階」から、有意義な絵画鑑賞を考える
今回は、パーソンズやハウゼンの「絵画鑑賞の発達段階」をもとに、絵画鑑賞をより有意義にする「鑑賞の手順」を考えていきたいと思います。
パーソンズとは
(Michael J. Parsons 1935- イギリス)
心理学者・ピアジェの「認知発達理論」やコールバーグの「発達段階説」を絵画鑑賞に応用し、絵画鑑賞の発達段階を提示しました。「絵画鑑賞の発達段階」
第1段階「偏愛主義」(Favoritism)
表面的な感想を抱く段階。
「好きな絵=良い絵」で、色彩へに注目する特徴がある。
第 2段階「美と写実主義」(beauty and realism)
「良い絵=描写力のある絵」と考え、描写技術の良し悪しで判断する。
第3段階「表現性」(expressiveness)
主観的にアーティストの思考や感情に注目できるようになる。
第4段階「様式と形状」(style and form)
形式、スタイル、歴史的な意義を知り作品を理解することができるようになる。
広い視野で客観的な判断ができるようになる。
第5段階「自律性」 (autonomy)
作品の背景や歴史的背景・一般的な作品評価を踏まえた上で、独自の考え方を示すことができるようになる。
ハウゼンとは
(Abigail Housen)
認知心理学者
1980年代にMoMA美術館の学芸員と共同で「感受性の段階」を提示し、その段階を応用した美術鑑賞教育法を開発しました。
この方法は「対話型鑑賞」として現在でもよく知られており、この教育方法を行うことで観察力・批判的思考力・コミュニケーション力を学ぶことができるとしています。「感受性の段階」
第 1 段階「説明の段階」(Accountive Stage)
主題や内容・色について個人的な感覚で観察や考察をすることができる。
第 2 段階「構成の段階」(Constructive Stage)
美術鑑賞の枠組みが作られ始め、社会的な価値観で評価・判断できるようになる。
第3 段階「分類の段階」(Classifying Stage)
作家や流派・時代などを踏まえて、客観的な見方ができるようになる。
第 4 段階「解釈の段階」(Interpretive Stage)
個人的な解釈ができるようになる。独特なものを好む。
第 5 段階「再創造の段階」(Re-creative Stage)
自分で得た知識や解釈が再構築され、新たな捉え方ができるようになる。
まとめ
この2つの発達段階を比べて見ると、ある程度共通していることがわかります。
美術鑑賞の発達段階
①作品の表面を見て個人的な感想を抱く
②描画技術の素晴らしさに気づく
③④作家や作品についての情報を踏まえ作品を理解できる
⑤様々な情報を持った上で自分なりに解釈することができる
となります。
この発達段階を利用して絵画鑑賞の手順を考えると、
絵画鑑賞の手順
- 作品について個人的な感想を考える。
- タッチや写実的な部分に注目する。
- 作品の描かれた時代背景や当時の世界・地域の状況を知る。
- アーティストについて、生まれた環境や所属した流派、出来事などについて知る。
- それらを踏まえた上で改めてこの作品について考える。
といった順序になります。
この順序で鑑賞をしていくと、鑑賞がより有意義になるのではないでしょうか?
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投稿 2021.05.21
更新
参考
鑑賞支援ツールのひろば 鑑賞の発達理論
https://www.geijutsu.tsukuba.ac.jp/kansho/%E9%91%91%E8%B3%9E%E3%81%AE%E7%99%BA%E9%81%94%E7%90%86%E8%AB%96/
パーソンズの『絵画の見方』における発達の概念と その美学的枠組みに関する考察(1 大学美術教育学会「美術教育学研究」第 48 号 2016年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/uaesj/48/1/48_377/_pdf/-char/ja
ゼロアート 美術鑑賞の7つの効果とは?美術鑑賞を行うことで得られる7つの力について解説!
https://zeroart.jp/archives/3947