つれづれ美術手帖

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自画像 有名なものから少し変わったものまでご紹介!

自画像は、自分自身を描くことから、自己の感情や考え方など、画家自身の内面を表現する良い画題です。
特に、写真技術の発展により「見たものを写す」という大きなニーズが無くなった近代以降、多くの画家が好んで自画像を描きました。
歴史に残る画家たちは、何を思って自画像を描いたのでしょうか?
今回は、そんな画家たちが描いた自画像を、有名な作品から少し変わった作品まで、多数ご紹介します。

レンブラント・ファン・レイン(1606−1669年 オランダ)

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(写真)自画像 レンブラント 1640年
レンブラント34歳、絶頂期の作品。
この作品を描いた2年後に「夜警」が完成します。

レンブラントは「夜警」で知られる、17世紀のオランダ絵画黄金期最大の巨匠です。
彼は生涯において、スケッチを含めおよそ100枚もの自画像を描きました。
彼が大量の自画像を描いた理由は、絵(肖像画)の研究のため、モデルを雇うとお金がかかるからと言われています。
レンブラントの特徴は光の劇的な描写。光と影を巧みに使うことで、モデルの生き様や内面までも表現しようとしました。
そんなレンブラントの自画像では、彼が自画像を描いた時期の心境や考えが構図や表情、光のあて方などによって垣間見ることができます。
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(写真)自画像 レンブラント 1669年
レンブラント最晩年の作品
晩年のレンブラントは、没落し大切な人を失い続けて孤独な生活を送ったと言われています。
この自画像では、こだわりすぎて世間から見放されたほどの、彼の卓越した技術が余すこと無く表現されています。
(参考ページ)
http://omochi-art.com/wp/self-portraits-by-rembrandt/
アートをめぐるおもち「100枚も自画像を描いた?レンブラントの自画像を紹介します!」
レンブラントの自画像を年齢別に一覧にしているサイトです
https://artmuseum.jpn.org/rembrndtjigazou.html
西洋絵画美術館「レンブラントと自画像」
レンブラント年代ごとにその時起こったエピソードとともにざっくりピックアップしているサイト

ギュスターヴ・クールベ(1819-1877年 フランス)

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(写真)絶望する男(自画像) ギュスターヴ・クールベ 1843年頃
クールベ24歳頃の作品。

クールベは現実に見たものだけを描く、写実主義の画家。
当時は描かれることがなかった貧しい農民や労働者、普通の女性のヌードなどを積極的に描き、ロマン主義や古典主義とは対立した、当時前衛的な画家でした。
クールベ初期の作品には自画像が多くあります。
彼の自画像では、写実主義の画法を確立する前の、なめらかな線とダイナミックな形のロマン主義の画法の作品を見ることができます。
のちに、自然とかけ離れた大げさなこの画法に疑問を持ち、対立した画法を確立していくことになりますが、この作品からも、型にはまっていない前衛的なポーズから彼の野心的な考えが垣間見ることができます。
クールベは自分のことを「フランスで最もうぬぼれて、傲慢な人間だ」と言っていたそう。
タイトルの「絶望」と、どのような関係があるのでしょうか?
(参考)
https://www.musey.net/12829
MUSEI 絶望(自画像) 画家 : ギュスターヴ・クールベ

ポール・ゴーギャン(1848-1903年 フランス)

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(写真)光輪のある自画像(戯画的自画像) ポール・ゴーギャン 1889年

ポール・ゴーギャンはフランスのポスト印象派の画家。
ゴーギャンはポスト印象派の中でも特に、見たものを感覚的に捉える印象派を否定したことで知られており、目に見えない内面や思想・神秘的な世界を表現しようとしました。
この自画像では、光輪やりんご、蛇といった、キリスト教のモチーフが描かれており、宗教的な要素に影響を受けていたことがわかります。

エドヴァルド・ムンク(1863-1944年 ノルウェー

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(写真)地獄の自画像 エドヴァルド・ムンク 1903年 ムンク美術館

ムンク表現主義の代表的な画家の一人。
病気で家族を早くに亡くし、暗い幼少期を送りました。
ムンクは自身の私生活の苦難や不安を自画像として多く描きました。
この作品では、黒・赤を基調とした暗く不気味な背景と裏腹に、全く防御されていない丸裸のムンクが、まるで自信満々かのように立っています。
首から上は赤く背景に溶け込み、怒っているようにも見えます。

また、ムンクの代表作「叫び」は、絵のモデルは自分自身でないものの、自分の内面を表現しているという意味で自画像とも言えます。
(ちなみに、絵のモデルはパリ国際万博で展示されたペルーのミイラと言われています)

エゴン・シーレ(1890-1918年 オーストリア

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(写真)むき出しの肩を高くあげた自画像 エゴン・シーレ 1912年 42.2×33.9cm レオポルド美術館

エゴン・シーレ表現主義を代表する画家。
28歳という短い人生の中で驚くほど多くの作品を描きました。
彼の自画像は、自らの悲劇的で壮絶な人生を物語るような、精神的でセクシュアリティ表現が特徴です。
歪んだ顔は恐怖に怯えているような表情を誇張し、肩は窮屈に上に押し上げられているように見えます。
シーレは、この作品で筆と指先を使って描いた後、顔を筆の先端で傷つけたと言われています。

サルヴァドール・ダリ(1904-1989年 スペイン)

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(写真)焼いたベーコンのある自画像 サルヴァドール・ダリ 1941年 61×51cm ガラ=サルバドール・ダリ財団所蔵

サルヴァドール・ダリシュルレアリスムの代表的な画家。
ダリは自身の精神的苦痛やトラウマを、ダリの身近にあるモチーフを使って表現しました。
中でも特に溶けたチーズや時計、顔を好んで描きました。
この自画像では、仮面のような薄い自分の顔がチーズのように溶けようとしていて、目や顔の裏などに松葉杖を置くことでかろうじてそこに留まっている儚い様子が描かれています。

フリーダ・カーロ(1907-1954年 メキシコ)

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(写真)死を考える フリーダ・カーロ 1943年 個人蔵

フリーダ・カーロはメキシコの現代絵画を代表する画家。
18歳の時、交通事故で重傷を負ったことをきっかけとして絵を描き始めます。
彼女は死や愛といったテーマで自画像を数多く描き、また自画像に大きな葉・動物・ドクロなどといったモチーフを好んで描きました。
フリーダ曰く「私はほとんどの時間を一人で過ごすし、自分のことは自分がいちばん知っているから、自分を描くのです」
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(写真)ひげネックレスとハチドリのセフルポートレイト フリーダ・カーロ 1940年
好んで描かれる猿はフリーダが飼っていた動物だったそう。

ルドルフ ハウズナー(1914-1995年 オーストリア

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(写真)自画像 ルドルフ ハウズナー 1955年 60×52cm

ハウズナーは幻想的な絵画を描くウィーン幻想派の画家。
細密な描写と豊かな色彩表現を駆使しながら、現実と非現実の組み合わせや、神話や名画から得たイメージ、遠近法などの技術を逆手に取った画法で不思議なイメージを作り出しています。
この自画像では、折り紙で作られた帽子が頭の上に描かれていますが、影もなく被っているようには見えません。
画面上でも最も目を引くといっても良い首は、普通よりも長く描かれ、ひねり、しなやかな曲線を作り出しています。
挑戦的な瞳は何を訴えているのでしょうか?

フランシス・ベーコン(1909-1992年 イギリス)

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(写真)自画像 フランシス・ベーコン
フランシス・ベーコンは、抽象絵画が中心だった第二次世界大戦後の美術界で具象絵画を描き続けた画家です。
フランシス・ベーコンの絵画から感じられるテーマは時間や動き、連続性など。
ベーコンは自画像で、1人の人間の時間による変化を画面上で描こうとしたと言われています。
連続的に描かれた立体的な顔は、歪みやデフォルメが目立ち、不安や恐怖などといった印象を受けます。
(参考)
https://www.artpedia.asia/francis-bacon/
artpedia【美術解説】フランシス・ベーコン「20世紀後半において最も重要な人物画家」

葛飾北斎(1760-1849年 日本)

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(写真)自画像 葛飾北斎 1840年
葛飾北斎は江戸時代後期を代表する浮世絵師です。
この自画像は北斎最晩年、80歳以降に描かれました。当時彼の雅号は「画狂老人卍」。
まさに、狂ったような自画像です。
この時代の日本では、肖像画は描いても画家が自画像を描くことはあまりありませんでした。北斎は何を思って自画像を描いたのでしょうか?
(サイト内リンク)https://funart.hatenablog.com/entry/2020/06/23/175416
つれづれ美術手帖 葛飾北斎

草間彌生(1929- 日本)

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(写真)自画像(Self-Portrait) 草間彌生 2010年
草間彌生は現代の日本を代表するアーティストの一人。
自身が体験している幻覚や幻聴を描くことで知られています。
(参考)
http://yayoi-kusama.jp/
草間彌生公式HP



いかがだったでしょうか。
その他、日本の表現主義の画家は自画像を好んで描いています。
詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください
(サイト内リンク)
https://funart.hatenablog.com/entry/2020/05/10/173047
つれづれ美術手帖 表現主義と自画像


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投稿 2021.07.08
更新 
参考 
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