つれづれ美術手帖

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水墨画の技法 有名な絵師とともに紹介

こんばんは、今日は墨の表現について、有名な絵師とともにご紹介します。

墨の表現技法は多種多様ですが、基本的に墨の量や筆の使い方によって、表現が変わってきます。

 

 

○基本の墨の使い方

*潤筆(じゅんぴつ)
筆の穂に墨をたっぷりつけること

*渇筆(かっぴつ)

墨を必要最低限(穂先が堅くなる程度)つけること

*割筆(わりふで)
筆の先をバラバラに割って描くこと

 

 

 

水墨画技法

*にじみ
紙の上に墨を垂らす方法
温かみ・穏やかな表現になります。

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(写真)虎図襖(一部) 長澤蘆雪 無量寺

 

 

*ぼかし
先に紙を湿らせておき、その上から墨で描く方法
にじみよりもぼやけた表現になります。
ぼかすことを隈(くま)とも呼びます。

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(写真)竹林猿猴図屏風(右隻一部) 長谷川等伯 相国寺

 

 

*たらし込み
淡い墨で描いた上に、濃い色の墨をたらし、にじみを出す技法
俵屋宗達が得意とした技法です。

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(写真)風神雷神図屏風(一部) 俵屋宗達 

 

 

*片ぼかし
片側だけをぼかす技法
筆全体に薄い墨を付けた後、穂先に濃い墨を付け、筆を寝かせて描きます。
丸山応挙が得意とした技法です。

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(写真)仔犬図 円山応挙筆 18世紀

 

 

*筋目描き(すじめがき)
墨の筋(境目の白い筋)をつくる技法
先に水(墨)を含んだ部分は、後から描いた墨と混ざらず、境目に白い筋が残る、紙の性質を活かした技法です。
特に画仙紙は、吸湿性が高く、墨がにじみやすいので、筋目描きに相性が良いです。
伊藤若冲が得意としました。

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(写真)芭蕉雄鶏図(ばしょうゆうけいず)一部 伊藤若冲 110×45cm
この、芭蕉(葉っぱ)や鶏の羽の質感表現に筋目描きが使用されています。
(参考)Youtube 篠原貴之 水墨画塾Vol 29 水墨画デモンストレーション「筋目描き」
https://m.youtube.com/watch?v=5TDdYQpdaUI

 

 

墨流し
水面に描いた墨の模様を写し取る技法。マーブリングとも言い、日本では平安時代から存在した技法です。
バットなどに水を張り、墨と油(まつやに)を交互にたらし、かき混ぜてから、紙をかぶせて写し取ります。

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(参考)米村でんじろうサイエンスプロダクション 墨流し
https://youtu.be/nsOuTZnYtTw
紙は雁皮でできた「鳥の子紙」が最適のようです。

 

 

*塩まき
塗った墨が乾かないうちに塩を振りかける技法
塩が水分を吸い取り、白く抜けていきます。
こちらは水彩画にも使われる技法で、伝統技法ではありませんが面白い表現ですので参考までに。

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水墨画の画法

ここからは、水墨画の制作の方法について、3種類ご紹介します。

*積墨法(せきぼくほう)*
乾いてから、墨を重ねて描く技法
輪郭も丁寧に描きます。
細部や質感を丁寧に表現するのに向いている技法です。

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(写真)秋冬山水図 雪舟 東京国立博物館蔵 国宝

 

 

*破墨法(はぼくほう)*
淡い墨の上から、紙が乾かないうちに、濃い墨を重ねていく技法
墨の濃淡で表現するので、基本的に輪郭は描きません。
ふんわりとした立体感や奥行きを表現するのに向いています。

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(写真)松林図(右隻) 長谷川等伯 16世紀末 156.8×356.0cm 東京国立博物館 国宝

 

 

*溌墨法(はつぼくほう)*
墨をはね散らすように、筆を勢いよく走らせて描く技法
基本的に輪郭線は描きません。

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(写真)破墨山水図 雪舟 1495年 東京国立博物館
こちらは「破墨」と名付けられており、調べても潑墨法と破墨法とで意見が分かれている山水画のようです。

が、美術館などでは溌墨法とよく書いてあるのでここではそのようにご紹介します。

ちなみに「破墨山水図」は昔の呼び名で、現在の正式名称は「紙本墨画山水図」
雪舟が作品の説明文に「破墨の法」と書いていたことから破墨山水図と呼ばれていたようです。

 

 

いかがだったでしょうか。

内容の認識違い等ありましたら、ぜひコメント等で教えてください

 

それでは、また明日

 

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投稿 2020.04.26

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