つれづれ美術手帖

アート関連のアウトプットブログです。

画の六法

画の六法
1気韻生動(きいんせいどう)  生命力
2骨法用筆(こっぽうようひつ) 素描力・線
3応物象形(おうぶつしょうけい)描写力・形
4随類貝武彩(ずいるいぶさい) 彩色力
5経営位置(けいえいいち)   構成力
6伝移模写(でんいもしゃ)   模写


画の六法とは、中国の絵画史上で最も重要な画論文献の一つである「古画品録」に登場する、絵画の評価方法です。
古画品録とは、中国南北朝時代(5-6世紀)、南斉の謝赫(しゃかく)が著した画論書。
この画の六法は、制作時にも、評価・鑑賞の時にも使用されたもので、当時の中国における絵画の「見方」を知ることができるものです。
「六法」というだけあって6つの評価方法があり,それぞれ1~6の番号が割り振られ,若い番号のほうが重要視されました。
以下では、それぞれを詳しく解説していきたいと思います。


(写真) 古画品録 謝赫


1気韻生動(きいんせいどう)

気韻とは、日本語で表すと「生命力」。生き生きと描かれているかどうか、という意味です。
生命力を絵として表現するために、神や自然などとの交流を行うことが大切であるとしました。
また、8世紀後半(唐代中期)以降には、「描いた人の心が表れているかどうか」という観点で捉えられ、内面的な表現が尊重されるようになりました。
描いた人の心を絵に写すことを「写意(しゃい)」と呼び、写意の表れている絵がよしとされました。


(写真)破墨山水図 雪舟 出光美術館

2骨法用筆(こっぽうようひつ)

骨法用筆とは、簡単に言うと「デッサン力」のこと。
画の六法では、絵の中に生命力を表現するには、デッサン力が必要であるとされました。
骨法とは、画家の意識として素描を「作る」こと、
用筆とは、表現として素描を「使う」ことだそうです。

3応物象形(おうぶつしょうけい)

簡単に言うと描写力のこと。
物の形をリアルにとらえられているかどうかが求められました。
骨法用筆(デッサン力)との違いは、骨法用筆は主に「線」の表現のことを言い、応物象形は「形」のことを言います。
生き生きとした生命力を描くためには、物の動きや目に見えない感覚なども表現できていることが必要であるとされました。
そのため、モチーフの姿かたちの個性を、うまく象徴化(デフォルメ)できているかということも重要となりました。

4随類貝武彩(ずいるいぶさい)

彩色力のこと。
生命力を表現するために、様々な色の中から、表現に必要な色を的確に選択して塗ることが必要であるとされました。
それも、ただ色を付けるのではなく、生き生きとした彩色が必要であるとされ、画家たちは描く物の本質を色で表現できているかどうかが試されました。

5経営位置(けいえいいち)

構成のことです。
構成とはつまり「組み立てること」
描くモチーフを生き生きと表現するために、それぞれのモチーフをあるべき位置、意味のある位置に置くことが求められました。
当時、生き生きとした躍動感は微妙な不調和に宿る、とされていたため、モチーフを画面の中央に配置したり、左右対称な構図にしたりする調和表現を避ける傾向にありました。
これは今日の日本人画家にも通じている考え方でもあります。

6伝移模写(でんいもしゃ)

模写のことです。
伝移とは、画家の意識で、模写とは表現のこと。
ただ単に表面の技術だけを写し取るのではなく、描いた作家の生命力や精神性までも写し取ることが重要とされました。

世界的にも、古典を学ぶことは重要視されてきましたが、
「作者の精神性」まで表現するということを最重要とした、というところが興味深いです。



いかがだったでしょうか
キーワードは「生き生きとした表現をすること」
まず1に大事なことが「生き生きと表現できること」で、それを表現するためにデッサンや彩色を工夫すること
また,古典の模写よりもそれらが重要視されていたことは興味深いと思いました。

それと,のちに(15世紀頃)「墨戯(ぼくぎ)」という,技術よりも精神的なものの考え方で自由奔放に描く画風が誕生しますが,中国では「精神」というものがどれだけ重要視されていたかということが伺えるような気がします。



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投稿 2020.06.01
更新 2021.02.16
参考 



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