日月山水図屏風
こんばんは。
今日は日月山水図屏風(じつげつさんすいずびょうぶ)について、お話しします。
日月山水図屏風は、密教で行われる、灌頂(かんじょう)という儀式に使用する仏具の一つだそうです。
灌頂とは、諸仏や曼荼羅と縁を結び、正統な継承者となるために頭に水を注ぐ儀式だそう。
鎌倉時代から幕末にかけては天皇の即位式にもこの灌頂が行われていました。
ここからは、室町時代に制作された2つの日月山水図屏風をみていきたいと思います。
東京国立博物館蔵「日月山水図屏風」
(写真)日月山水図屏風 室町時代・16世紀 148.1x312.0cm 東京国立博物館 重要文化財
大きくうねる木々や、水流を描く「動的」な右隻に対し、
左隻は水流も穏やかで木や山もどっしりと、伸び伸びとそこに描かれています。
右隻・左隻を並べてみると、連動しているようでしていない。
この作品は、もとは別々に描かれた作品であったものが屏風として組み合わされた、と考えられています。
それぞれ個々にみてみると、とても見やすくて構図もいいような気がします。
左上にある太陽が山々からひっそりと顔を出しています。
季節は冬から春にかけてでしょうか。
銀色の月がわびさびを感じさせます。
季節は夏から秋にかけてでしょうか。
生茂る木々と葉の落ちた木が描かれています。
金剛寺蔵「日月山水図屏風」
日月山水図屏風 作者不明 15〜16世紀 金剛寺 国宝
こちらは大阪府の金剛寺にある重要文化財の屏風です。
金剛寺は密教のお寺。修行僧が日々の修行の中で描いたのではないかといわれています。
特徴的なのは山や水流などのダイナミックな表現。
生き物のような躍動感を感じます。
右隻は、春から夏の景色に金箔の太陽。
左隻は、秋から冬の景色に銀箔の月。
中央の海を軸として時が流れています。
先ほどの屏風とは間反対の方向に季節が描かれているのが不思議です。
また、ここで注目したいのが白の顔料です。
この作品では、
・雪全体は「胡粉」で平らに塗って
・松の上に降り積もった雪を「鉛白」で盛り上げ
というように、白色顔料の使い分けがされています。
鉛白は、平らに美しく塗りやすい
胡粉は、盛り上げて塗りやすい
という、それぞれ特徴がありますが、
こちらの作品では逆の用途で使用されています。
金剛寺の日月山水図屏風が制作された年代は、白色顔料の材料がこれまで多く使用されていた鉛白から、胡粉という絵具に転換していく時期でした。
この作品は、もしかしたら白色顔料の使い方を試行錯誤していた作品だったのでしょうか。
※参考文献
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/224264/1
いかがだったでしょうか
内容の認識違い等ありましたら、ぜひコメント等で教えてください
それでは、また来週
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投稿 2020.
更新
参考
https://www.tobunken.go.jp/~ccr/pdf/58/5807.pdf
(報告)国宝日月四季山水図屏風の蛍光x線分析(2019年発行)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/224264/1
感性を育てるアートチャンネル on stand.fm
https://stand.fm/channels/5f5aa2a0f04555115d2e85e4
アプリもありますが、ダウンロードしなくても視聴頂けます。