つれづれ美術手帖

アート関連のアウトプットブログです。

瀟湘八景

こんばんは、今日は瀟湘八景(しょうしょう はっけい)について、お話しします。

 

 

*概要*
意 味 瀟湘を季節と絡ませて描いた8つの名所のこと
    中国の山水画の伝統的な画題
発 祥 中国 宋迪(そうてき・11世紀後半の士大夫)
場 所 瀟水と湘江の合流するあたり

    湖南省長沙市
先駆け 中国 北宋時代

時 代 日本は鎌倉時代
分 類 唐絵 水墨画
特 徴 いろいろな描き方がある
影 響 浮世絵(近江八景金沢八景
その他 日本では狩野派が好んで描く

 

 

 

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(写真)瀟湘八景図(二幅のうち) 是庵 京都国立博物館
瀟湘八景とは、瀟湘の景色と、季節を絡ませて描いた8つの題材からなる作品のことを言います。
瀟湘(しょうそう)とは、中国湖南省という場所の、瀟水と湘江の2つの河が合流するあたりのことを言います。
瀟湘は古来から清らかで美しい水郷地帯として知られている場所でした。
GoogleMapで場所を調べてみたのですが、中国の中央・南東寄りの位置にある地域のようです。

瀟湘八景は北宋時代、山水画を得意とした宋迪(そうてき)という人物が瀟湘に来た時、この景色を描いたことからこの画題が流行したと言われています。
ちなみに、宋迪は士大夫という、官僚・地主・文人すべてを兼ね備えた人物だったそうです。

 

 

 

*瀟湘八景*
「瀟湘八景」は、瀟湘の風景を季節に合わせて八通り描けばいい、というものではありません。
八つの画題と描く内容は、具体的に決まっています。

 

瀟湘夜雨(しょうしょうやう) 

 瀟湘に降る夜の雨
平沙落雁(へいさらくがん)  

 秋に雁が鍵になって干潟に舞い降りる姿
烟寺晩鐘(えんじばんしょう) 

 夜、夕霧に煙る寺から届く鐘の音
山市晴嵐(さんしせいらん)  

 山里の煙る様子・市の賑わい
江天暮雪(こうてんぼせつ)  

 日暮れの河の上に舞い降りる雪
漁村夕照(ぎょそんせきしょう)

 夕焼けに染まる寂しい漁村の風景
洞庭秋月(どうていしゅうげつ)

 同庭湖のうえにさえ渡る秋の月
遠浦雲帆(おんぽきはん)   

 夕暮れに帆かけ舟が戻ってくる風景

 

こうやってみると、「寂しい」「秋」「夕(夜)」というような、内容が共通しているものが多く見かけられます。
このようなものが、当時の絵画界では「美しい」とされたのでしょうか。

 


*いろいろな描き方がある*
瀟湘八景は、画題と描くものは決まっていますが、具体的にどこの寺や山を描くかは特になく、構図も自由です。
八幅で一つずつ題材を描く人もいれば、一部だけ、もしくは八つの画題をすべて一枚の絵に描く人もいます。
描く人物によって大きく変わってくるので、そこが面白い部分でもあります。

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(写真)瀟湘八景図(四幅のうち一幅) 狩野元信 1490-1559年 東海庵 重要文化財
この一幅には烟寺晩鐘と漁村夕照の二つの題目が描かれています。
キーワードは「寺(烟寺晩鐘)」と「舟(漁村夕照)」。これでどの題目が描かれているかがわかります。

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(写真)破墨山水図 伝橋本雅邦 38.0×59.5
こちらは一枚にすべての題目を入れた作品。他の瀟湘八景とは少し雰囲気が違います。

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(写真)瀟湘八景(8幅のうち1幅) 横山大観 1912年 113.6×606 東京国立博物館 重要文化財
構図に関しても新しさがありますが、なにより他と違うのは「色彩鮮やかな色彩」
この大観の水墨画は、これまでの様式とは大きく違い、日本画壇を驚かせたと言われています。
ちなみに、この作品は夏目漱石が「気の利いた様な間の抜けた様な趣」があると評したことでも有名です。

 

 

 

いかがだったでしょうか
内容の認識違いなどありましたら、ぜひコメント等で教えてください。
それでは、また明日
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投稿 2020.05.21
更新 
参考 

京都国立博物館 瀟湘八景図を楽しむ

https://www.kyohaku.go.jp/jp/dictio/kaiga/70shosho.html